〔アートな時間〕映画　秘密の森の、その向こう　鎮魂は日常の雑音に伴われて　シアマが用いた深いマジック＝芝山幹郎
エコノミスト　第１００巻　第３５号　通巻４７６２号　2022.9.13

この記事の情報
掲載誌	エコノミスト　第１００巻　第３５号　通巻４７６２号（2022.9.13）
ページ数	2ページ　（全1314字）
形式	PDFファイル形式　（1117kb）
雑誌掲載位置	９２〜９３頁目

　少女がひとり、老人ホームの個室を順番にまわり、居住者に別れを告げている。やがて少女は居住者のいない部屋に入る。部屋では、少女の母親らしい女が衣類や食器を片づけている。母方の祖母が亡くなったのだ。「杖(つえ)をもらっていい？」と少女は母親に尋ねる。　なにげない始まりだが、見る側の神経をきゅっと締めつける電波が感じられる。ぼんやり眺めていてはいけない、という警告も頭のなかで響く。娘は父母の車に乗せら…