〔アートな時間〕映画　インサイド・ルーウィン・デイヴィス　可哀相だがおかしい主人公。ふらふら人生を陰翳豊かに＝芝山幹郎
エコノミスト　第９２巻　第２２号　通巻４３４４号　2014.5.13

　コーエン兄弟の映画には、駄目男やぼんくらがよく出てくる。ヘマやしくじりを重ね、頼みもしないのにつぎつぎと不運に見舞われる男たち。真っ先に思い出すのは「赤ちゃん泥棒」のハイ・マクダノー（ニコラス・ケイジ）だが、「ファーゴ」のジェリー・ランディガード（ウィリアム・Ｈ・メイシー）や「シリアスマン」のラリー・ゴプニック（マイケル・スタールバーグ）なども、その例に漏れない。　彼らには共通点がある。顔や言動…