鳥越俊太郎・ジャーナリスト▼四度の手術を支えた『方丈記』の死生観
プレジデント　2013.6.17号　2013.6.17

　私はがん患者の多くが受ける「告知」という洗礼を受けていない。いきなりがんを「目撃」してしまったからだ。　最初の異変はビールがまずくなったこと。二〇〇五年夏のことだ。便に赤いものが混じっていることにも気づいた。便器が真っ赤になる日もあった。「がんではないか」という不安がよぎった。が、長年の痔持ちゆえに「鮮血だから痔による出血」と勝手に心に言い聞かせ、事態を直視しなかった。　そのうちに左下腹部が重た…