〔書評〕海外出版事情　アメリカ　世界史の再定義に挑む政治学者＝冷泉彰彦
エコノミスト　第９２巻　第５１号　通巻４３７３号　2014.12.2

　アメリカの政治学者フランシス・フクヤマ氏は、冷戦終了期に書かれた『歴史の終わり』（邦訳・三笠書房、１９９２年刊）が世界的なベストセラーとなり、ポスト冷戦時代の思想家として注目された。確かに、ベルリンの壁が崩れ、非民主的なソ連の体制が崩壊する時代にあっては、「自由と民主主義」の正当性が永遠であるという同氏の主張は大きな説得力を持ったのである。　だが、そのような「説得力」は長くは続かなかった。91年…