〔企業小説を読む〕大下英治が語る企業小説の先駆者、梶山季之＝大下英治
エコノミスト　第９２巻　第１号　通巻４３２３号　2014.1.7

　梶山季之さんは、「企業小説」のパイオニアである。　それまで源氏鶏太による『三等重役』のように、のんびりとした「サラリーマン小説」はあった。が、時代は、サラリーマンから熾烈(しれつ)な企業戦争を戦い抜くビジネスマンに移った。そのビジネスマンの戦いの中で、「産業スパイ」なる存在を明るみに描いたのが、梶山さんの『黒の試走車』であった。その作品は、空想で描けるシロモノではなかった。ライバルの自動車メーカ…